マクベスの下着

「あ、あのさ。リフィリアちゃん、あれ」
 ライターは視線をリフィリアに合わせないまま、風に揺れる沢山の赤い布を指差した。
「あ、あれマクベスのだから!」
 リフィリアは慌てた様子で赤い布の前に立つ。隠そうとするも、風に揺れる何枚もの赤い布は元気に風に乗るばかりで、一向に隠れる様子はない。
「あのね、マクベスって結構綺麗好きでね! 1日に何回もかえる時があるんだよ!」
 一生懸命何かを言い訳しようとする度、かえってリフィリア自身の羞恥心を増していく。
「そっか……。あのさ。あれ、下着だよね? あの赤いの全部、フンドシだよね?」
 赤い布――フンドシは真っ赤な炎のように美しく、ただ黙ってはためくばかり。リフィリアのフォローなどするはずもない。
「個性的だね、フンドシって。うん。どこで入手するんだろうね。すごいな、しかも赤」
 闊達なライターでも、「マクベスの下着はフンドシ」という事実は余程衝撃が大きかったらしく、その表情はぎこちない笑みを作っていた。ライターの表情の意味に気付いてしまえば、リフィリアは泣き出しそうな程に顔を真っ赤にさせた。
「あのねリフィリアちゃん! マクベスならきっと、これを最大の魅力を引き出しつつ身に付けられると思うんだ! ね、すごいいいと思うな! オレも下着、フンドシにしちゃおうかな!」
「なんだライター君。欲しいなら欲しいと早く言いたまえ。新品が沢山あるぞ」 
 はためくフンドシの中から、そのフンドシの愛用者――マクベスが颯爽と現れる。新品のフンドシを大切そうに抱えていた。
「ところでライター君の下着はどんなものなんだ? どれどれ」
「ちょっと待って落ち付いて触らないでねぇお願いだから!」


 赤いフンドシは、明日からもはためくだろう。



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